医療法人の附帯業務についてが、わかりません。

医療法人設立をする際において、ケアハウスの事業を行いたいと考えております。
しかし、衛生局の方から「現在の計画のままでは厚生労働省令の施設基準を満たしてお
らず、事業化は不可能である。」と指導が入ってしまいました。
 医療法人設立も、結局あきらめてしまいました。

<失敗のポイント>
 ケアハウス事業に関しては、医療法人で行うことは問題ないと言えます。しかし、厚生労働省令の施設基準などを満たしていない可能性があることを頭に入れておくべきでしょう。
 ケアハウスなど介護事業社の指定基準については、
・ 設備基準。
・ 運営基準。
・ 人員基準。
で構成されております。

<正しい対応>
(1) 医療法人の附帯業務には、様々な制限が存在しています。
したがって、よく確認してから事業計画を立案することをお勧めいたします。
(2) この場合においては、ケアハウス事業を実施することが不可能であっても、医療法人設立までは、あきらめる必要はないと考えられます。
まずは、医療法人設立を行ってから、附帯業務については、法人設立後に、専門家に相談しつつ、計画を立てていくのが良い手だと考えられます。
法人設立が主たる目的なのか、それともケアハウス事業が主たる目的なのかも重要なポイントとなるでしょう。

<税法等の解説>
医療法人の業務内容
 医療法人が行うことのできる業務については、病院、診療所または介護老人保険施設のみとなっています。
 しかし、業務に支障のない場合に限っては、定款あるいは寄附行為の変更により他の医療に関係する業務も運営することが可能となります。
○ 本来業務【医療法第39条】
医療法人は病院、医師あるいは歯科医師が常勤する診療所または介護老人保健施設の開
設を目的として、設立される法人のことと呼ばれます。

○ 附帯業務【医療法第42条】
医療法人は、その開設する病院、診療所あるいは介護老人保険施設の業務に支障のない
場合に限って、定款あるいは寄附行為の定めるところによって、次に掲げる業務の全部または一部を行うことが可能となります。
 また、医療法人は、上記によって、本来業務の他に医療法第42条各号に定められている業務を行うことが可能となります。しかし、附帯業務については、委託すること、または本来業務を行うことなく、附帯業務のみを行うことは医療法人の運営上、不適当であるとされていることに留意しなければなりません。

○ 附帯業務の具体例
・ 医療関係社の育成または再教育:看護専門学校、リハビリテーション専門学校。
(注)後継者等に学費を援助し、医学部等で学ばせることは該当することはない。

・ 医学または歯学に関する研究所の設置:臨床医学研究所、腫瘍医学研究所。
(注)設置目的が医療法人の目的の範囲から逸脱するものでないこと。

・ 医療法第39条第1項に規定する診療所以外の診療所の設置:巡回診療所、へき地診療所。
(注)医師等が常時勤務していない診療所の場合でもよいとする。

・ 疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設:メディカル・フィットネス(厚生労働省令の施設要件を満たすもの)
(注)「厚生労働大臣の定める基準」については、平成4年7月1日厚生省告示第186条を参照のこと。

・ 優良老人ホームの設置:サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
(注)高齢者住まい法に規定するもの。

・ 失敗予防のために温泉を利用させる施設:クアハウス(厚生労働省の施設要件を満たすもの)
(注)「厚生労働大臣の定める基準」については、平成4年7月1日厚生省告示第186条を参照のこと。

・ その他保険衛生に関する業務:下記参照。

○ その他保健衛生に関する業務
保健衛生に関する業務については、厚生労働省より通知が出されており、主に医科の業
務が運営可能となっているようです。

・ 衛生事業:薬局、施術所、衛生研究所。
・ 高齢者支援:高齢者等の介護予防、生きがい活動支援事業、在宅介護支援事業。
・ 患者の送り迎え:介護保険法に規定する訪問介護その他一定の事業の連続して、または一体としてなされる患者等の有償移送行為で道路運送法に規定されているもの。
・ 介護事業:訪問看護ステーション、介護福祉士養施設、ケアハウス、ホームヘルパー要請研修事業。
・ 社会福祉関係:難病患者等居住生活支援事業、乳幼児健康支援一時預かり事業。

ホームページの導入についてが、わかりません。

このたび、クリニックの診療案内等、情報の公開を目的としたホームページを作成する
ことにし、導入することができました。
 自動的に待ち時間を掲示するシステム等も製作したため、かなり高額な制作費になり、全額を経費に計上することにしました。しかしその後、税理士から「全額を広告宣伝費として計上するのは、誤った処理になってしまいます。」という指摘を受けてしまいました。

<失敗のポイント>
 ホームページは原則、広告宣伝費として一括損金算入が可能となります。
 しかし、プログラミング言語を用いてデータベースやネットワークにアクセスするようなホームページは、その費用を一括損金算入することは、不可能になってしまいます。

<正しい対応>
 本事例のように、プログラムを含むような制作費の部分については、ソフトウェアとして資産計上しなければならないようです。ソフトウェア作成費用については、他の作成費用とは別に「無形固定資産」となり、償却年数は5年となるようです。
 ソフトウェアを区別できない場合については、全額「無形固定資産」として計上しなければなりません。それを避けるためには、見積書・請求書で内容を明確にしておく必要があるでしょう。

<税法等の解説>
ホームページの作成
 原則的に、ホームページの作成は、支出時の損金として取り扱うことになりますが、例外もあるので注意が必要となるでしょう。

○ ホームページ作成費用の取り扱い
ホームページ作成費用については、金額、ホームページに附帯する機能、使用期間など
によって処理の方法が異なりまして、広告宣伝費として一時の損金に算入する場合やソフトウェアとして資産計上する場合についてなどが考えられます。
 したがって、作成費用についての内訳等の詳細がわかる資料を確認して処理の判断をする必要があるでしょう。

○ 一時の損金に算入する場合、ソフトウェアとして資産計上する場合
通常医療法人の場合について、ホームページは医院のPRのために作成されるものであ
り、その内容は頻繁に更新されるため、開設の際の作成費用に、支出の効果が1年以上には及ばないと考えられますので、ホームページの作成費用については、原則として、その支出時の損金として取り扱うのが相当であると考えられております。
 しかし、例えばホームページにデータベースにアクセスできるような機能などのプログラムが組み込まれている場合については、プログラム作成費用に相当する部分はソフトウェアとして資産計上を検討する必要があるでしょう。
 ただし、その作成費用が10万円未満である場合や使用可能期間が1年未満である場合については、少額原価償却資産として、一時の損金として処理することが可能となります。
 また、その作成費用が10万円以上30万円未満である場合については、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例により一時の損金に算入にする方法や、その作成費用が10万円以上20万円未満である場合については、一括償却資産として3年に渡り均等償却する方法の選択が可能となります。
 なおソフトウェアとして資産計上した場合については、無形固定資産のソフトウェアの法定耐用年数5年に渡り償却していくことになるようです。

○ 作成費用が10万円以上になる場合
ホームページを公開し、かかった費用を会計処理する際には、ホームページ作成費用の
額が10万円以上の場合については、損金として一度に落とすことが不可能になり、何らかの資産として計上する必要が生じる場合が存在しています。税務上、利益を圧縮する恐れのある高額の支出は、減価償却資産として、その資産を使用可能な期間中、分割して償却していくよう決められております。
 10万円という金額的基準だけでなく、そのホームページがどのような目的で作られたのかということも判断されることになります。会社のプロフィールや新製品、キャンペーン等の紹介が載っている一般的なホームページについては、街中や駅で見かけるポスターや、テレビやラジオで流れるCM同様、法人の広告宣伝の手段の一つと判断されることになります。そのため、ホームページの作成費用については、会計上も税務上もポスターやCMと同様、広告宣伝費として、ホームページを公開した年に一括して損金算入してよいということになるようです。

○ 明らかに1年を超えて使うホームページについて
プログラム作成費用に相当する部分がなかったとしても、ホームページの内容が更新さ
れないまま使用期間が1年を超える場合については、その作成費用はその使用期間に応じて償却することになります。

<税理士からのPOINT!>
 ホームページ作成費用のうちプログラム作成費用に相当する部分はソフトウェアとして資産計上を検討する必要があるでしょう。

消費税についてが、わかりません。

これまで30年以上にわたり、個人開業医として地域医療に携わってきていましたが、
このたび、医療法人として新たに大きな一歩を踏み出すことにいたしました。
 新しい法人に対しては、代表者である私が個人診療所を経営していた際に、有していた資産など1300万円の基金を拠出しております。
 ところが、事務長から「資本金の額あるいは出資の金額が1000万円以上になってしまうし、院長の個人診療所時代の課税売上も1000万円以上となるから、初年度から消費税の課税事業者になってしまうのでは?」という指摘を受けてしまいました。

<失敗のポイント>
 この法人のように基金を有する持分の定めのない社団医療法人の場合において、基金の額は消費税法の定めている「資本金の額あるいは出資の金額」には該当することはありません。
 また、新たに設立された法人については基準期間が存在していないため、原則として、設立1期目及び2期目は、免税事業者となります。

<正しい対応>
 これまでの出資持分ありの経過措置型医療法人と異なり、法人の事業年度開始の日における基金の額は「消費税法第12条の2(基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)に掲げる『資本金の額あるいは出資の金額』に該当することはない」とされているようです。
 したがって、基金の額が1000万円未満であることが消費税免税事業者の必須条件ではなくなったことに留意しなければなりません。
 また、法人の「課税期間の基準期間(法人の場合は前々事業年度のこと)」における課税売上高が1000万円を下回る場合については、消費税の納税義務が免除されることになります。
 新たに設立された法人については基準期間が存在していないため、原則として、設立1期目及び2期目は、免税事業者となるようです。(2期目移行は特定期間の課税売上高でも判定することになります。)
 なお、個人事業者がいわゆる法人成りによって、新規に法人を設立した場合については、個人当時の課税売上高については、その法人の基準期間の課税売上高に含まれることはありません。

<税法等の解説>
医療法人の消費税
 2007年4月施行の改正医療法によって、医療法人の非営利性の徹底の観点から鑑み、施行後に認可申請を行って、設立される社団医療法人については、出資持分のある医療法人は設立できない、とされることになりました。
 これにともない、持分の定めのない医療法人の活動の原資となる資金の調達手段として基金への拠出を募集することができることとされているようです。
 事例の法人については、このような基金を有する持分の定めのない社団医療法人となります。

○ 新たに設立する医療法人の消費税—原則は免税事業者
新たに設立した法人が「課税期間の基準期間」における課税売上高が1000万円以下
である場合については、消費税の納税義務が免除されることになります。
 この基準期間とは、原則として、法人の場合は前々事業年度のことをいうようです。
 したがって、新たに設立された法人のように基準期間が存在しない場合については、原則として消費税の納税義務が免除されることになります。また、2期目移行は特定期間の課税売上高でも判定されることになります。
 この場合で、個人事業者がいわゆる法人成りによって、新たに法人を設立したような場合においては、個人当時の課税売上高はその法人の基準期間の課税売上高に含まれない、とされているようです。
 これは、2007年4月施行の改正医療法によって、医療法人の非営利性の徹底の観点から鑑み、施行後に認可申請を行って、設立される社団医療法人については、出資持分のある医療法人の設立が不可能である、となりました。
 これにともなって、持分の定めのない医療法人の活動の原資となる資金の調達手段としては、基金への拠出を募集することが可能になりました。
 持分の定めのない社団医療法人の事業年度開始の日における基金の額については、消費税法の定める「資本金の額あるいは出資の金額」に該当することはありませんので、1期目の消費税は免除されることになります。

【簡易課税】
 課税期間の前々年あるいは前々事業年度の課税売上高が5000万円以下において、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書(消費税簡易課税制度選択届出書)を事業年度開始の前日までに提出している法人については、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことが可能である「簡易課税制度」の適用を受けることが可能となります。
 この制度については、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするものになります。この一定割合を「みなし仕入率」と呼び、事業の種類によって、みなし仕入率が異なるようです。

みなし仕入率
第一事業(卸売業):90パーセント
第二種事業(小売業):80パーセント
第三種事業(製造業等):70パーセント
第四種事業(その他の事業):60パーセント
第五種事業(サービス業等):50パーセント

※ 医療法人の場合については、おおむね50パーセントとなるようです。ただし、物品の販売等については80パーセント、不要な機器の売却については60パーセントと異なるみなし仕入率を適用されることになります。

医療法人の場合については、消費税の課税対象とならない社会保険診療などがあること、
経費のうちに人件費など、消費税の対象とならない金額の占める割合が、大きいことなどから、喚起課税制度を選択する法人が多くなるようです。

○ 消費税のかかる取引、かからない取引
医療法人の場合については、健康診断、自由診療などの消費税対象となる取引と、社会
保険料や労災など消費税の対象外の取引が存在しています。

【消費税の対象とならないもの】
 国民健康保険法・健康保険法・老人保健法などに基づいて行われる身体障害者福祉法・社会保険医療給付金、生活保護法などに基づいて行われる公費負担医療給付金、労働者災害補償保健法など基づいて行われる医療給付金、助産にかかる医療などの診療収入については、消費税がかかることはありません。

【消費税の対象となるもの】
 一方、診断書作成料、健康診断、予防接種委託料、人間ドッグなどの自由診療収入は消費税がかかる売上となるようです。また医業収入以外の収入についても、例えば自動販売機の売り上げ手数料、公衆電話の改修料金等の売上は消費税がかかることになります。その他、医療法人で使用していた固定資産を売却した場合の固定資産売却額などの、消費税の対象となるようです。
 消費税は一般課税・簡易課税どちらの制度を利用するのが有利になるのか、といった基本的な点も含めまして、事前シミュレーションが重要となるでしょう。そのためにも、どの取引が消費税課税対象となるのかは、きちんと確認しておきたいところになります。

○ あえて設立初年度から課税事業者になる。
設備投資が多額にあった場合などについては、免税事業者であっても課税事業者を選択
することによって、消費税の還付を受けることが可能となります。(課税仕入人が大きくなるためとなります。)
 新たに事業を開始した法人が課税事業者になるについては、その事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出ができれば、その課税期間から課税事業者となるようです。
 この届出書を提出した事業者については、事業廃止の場合を除いて、原則として、課税選択によって納税義務者となった最初の課税期間を含めた2年間は免税事業者に戻ることは不可能になっています。
 免税事業者である設立初年度から課税事業者になるかどうか、については慎重に考える必要があると考えられます。

○ 免税事業者である期間でも課税事業者に
2013年1月1日以後に開始する年あるいは事業年度については、基準期間の課税売
上高が1000万円以下(または基準期間がない場合)であったとしても、特定期間の課税売上高が1000万円を超えた場合については、当課税期間から課税事業者となるようです。(特定期間とは、原則として、法人の場合その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいうようです。)
 なお、課税売上高に代わって、給与等支払額の合計額により判定することも可能となります。
 たとえ設立2年目の原則免税事業者の期間であったとしても、特定期間の課税売上高が1000万円を超えそうな場合については、一般課税または簡易課税のどちらが有利かをシミュレーションしてあらかじめ届出を出しておくということも必要になってくるでしょう。

<税理士からのPOINT!>
 持分の定めのない社団医療法人の場合について、原則として設立初年度の消費税は免税となるようです。ただし、多額の設備投資を行う場合や、特定期間の課税売上高が1000万円を超える場合についてなど、課税事業者になる可能性があることにも注意が必要となるでしょう。消費税は将来的な事業計画も含めまして、どのやり方が有利なのか、事前に税理士等と相談しながら、シミュレーションすることがきわめて重要となります。

医療法人の関係法令について、説明してください。

10年ほど前に医療法人を設立した。設立当初から理事を務めている。
幸いにも今期中間決算で多くの利益を出すことができ、本決算でも昨年の何倍かの利益が想定されることになった。そのため、出資者に配当金を出したいと考えている。
そこで、税理士に相談したところ、この剰余金の分配については、違法行為だという指摘を受けてしまった。

<失敗のポイント>
 医療法人の根拠法令としては、「医療法施行令」、「医療法」および「医療法施行規則」が存在している。
 医療法は1948年に、「医療を提供する体制の確保を図り、もって、国民の健康の保持に寄与する」ことを目的に制定された法律となっている。したがって、営利を目的として病院、診療所等を開設することは否定されている。もちろん、このケースのような剰余金の分配も禁止されている。

※ 配当金:配当金は、企業や主催者から利益の一部を分配金として受け取るお金のことになる。株式会社の場合において、株主が所有している株式数に応じて、分配金として受取ることになる。投資信託や特定受益証券発行信託の分配なども、配当金に相当する。

<正しい対応>
  医療法人は、公益性が高い医療事業の経営を主たる目的となっていますが、公益法人とは区別されている。
 一方、剰余金の分配禁止により営利法人たることを否定されているので、会社法上の会社とも区別されている。
 決算なども営利法人等と同様に行われているが、いくら、利益が拡大したとしても、出資者等に利益を分配することは不可能となっている。このようなことをあらかじめ医療法人設立の際に、理解しておくことが重要となるだろう。

<税法等の解説>
医療法人の関係法令
医療法第54条 剰余金の配当禁止
医療法人は、剰余金の配当が禁止されている。

○ 医療法第54条「剰余金の配当禁止」
剰余金の配当が、医療法人は、禁止されている。医療法人で収益が生じた場合については、施設の整備、法人職員の待遇改善等に充てるほかは、医療の充実のための積立金として預金・国交債等元本保証のある資産によって、留保する必要があることになっている。また、特に注意すべきこととして、配当ではなくても、事実上利益の分配とみられる行為も禁止されていることに留意すべきだろう。

○ 事実上の利益分配と考えられる行為の例
・ 役職員の勤務実態と比較して、過大な給与または役員報酬の支払いをすること。
・ 第三者名義(役員等を含む)の債務を医療法人へ名義を移転すること。
・ 医療法人が、役員等やMS法人が所有等している試算を過大な賃借料で賃借すること。
・ 役職員に対して、算定根拠や支払根拠が不明確、または額が過大な退職金を支払うこと。
・ 正当な根拠がなく、役員および社員もしくはこれらの者と親族関係にある者(以下、役員等とします。)に対して、医療法人の資金等を貸し付けること。
・ 医療法人が第三者(役員等を含む)の債務を保証すること。

医療法人の剰余金の配当禁止については、厳密に、都道府県庁も取り締まっている。
事実上の利益分配と考えられる行為の有無を確認するべきだろう。
 また、医療法人が剰余金の配当をした場合において、または事実上の利益分配と考えられる行為をした場合については、医療法第76条第5項規定によって、監事または理事は、20万円以下の過料に処されることになる。

○医療法
 医療法人の根拠法令としては、医療法、医療法施行令および医療法施行規則が存在している。
 昭和23年に、医療法は「医療を提供する体制の確保を図り、もって、国民の健康の保持に寄与する」ことを目的に制定された法律となっており、営利を目的として病院、診療所等を開設することは否定されており、また配当も禁止されている。
 医療法人制度の目的は、医療事業の経営主体を法人化することにより(1)資金の集積を容易にするとともに、(2)医療機関等の経営に永続性を付与し、私人による医療事業の経営困難を緩和することにあるということを知っておくべきだと考えられる。

○ 医療法人の非営利性
医療法人については、その主たる目的が(公共性の高い)医療事業の経営となっている
が、公益法人とは、みなされてはいない。また、剰余金の配当が禁止されているなど、営利法人の枠からも除外されてしまっており、株式会社とは一線を画している法人形態といえるだろう。

<税理士からのPOINT!>
 剰余金の用途には、設備投資や法人職員の待遇改善など認められている範囲も存在していることもあるため、有効な活用方法を検討することが望ましい。

医療法人の機関について、説明してください。

神奈川県で医療法人を設立して5年が経った。監事を何かと便宜の図れる親族の者
に替えたいと思い、選出することにした。
 すると、神奈川県の衛生局から監事の変更について連絡があり、親族の就任は不可能であるため、選出しなおしてくれと言われてしまった。

<失敗のポイント>
(1) このケースの場合において、監事は、法人の財産状況および理事の業務執行状況を監査する職務であることを理解していないのかもしれない。
(2) 親族者および医療法人と取引関係のある者は監事には就任することが不可能となっている。

<正しい対応>
(1) まずは、監事を変更するのであれば、第三者に依頼するべきだろう。さらに、取引関係のない知人等の外部の第三者であることが必要となる。
(2) 親族が監事になると確かに便宜が図れると思われるかもしれない。しかし、医療法人を監査する職務を遂行することについては、親族であるために、かえって難しくなる可能性がある。5年間、監事を行ってきた方の継続が不可能になれば、第三者の選出が必要となるだろう。しかし、便宜を図ってもらいたいというのであれば、もう一度考え直してみることも大切になる。現在の監事が、監査の職務の適任かどうかを考えることが大切となる。

<税法等の解説>
医療法人の機関
 医療法人財団の運営機関には、理事会、評議員会並びに監事がある。
 医療法人社団の運営機関には、社員総会、理事会並びに監事がある。
 
○ 医療法人社団とは
医療法人社団においては、社員総会が法人の最高意思決定機関となる。
ここでの法人運営の重要な事項については、社員総会の議決が必要となる。
 医療法人社団については、運営機関として社員総会と理事会の2つが設置されており、社員総会は、定時総会と臨時総会とに分けられることになる。

○ 医療法人の行う行為について
 法人の行う行為は、すべて定款等法令または社員総会の決定に拘束され、理事長といえども独断で処理することは不可能となっている。
 日常の業務については、社員総会等の委任を受けているものとみなされることになるが、一定の範囲を超える新たな業務(高価な物品の購入、改修、借入金)は、必ず法人の最高意思決定機関である社員総会の議決にて決定することになる。
 社員総会は、定款の定めにより定期的に開催する必要がある。また、定款の定めるところにより、議決すべき議題がある場合については、その度に臨時総会を開催することが可能となる。

○ 理事会とは
理事会については、社員総会で決定された事項を執行する機関となる。また、これ
を監査する機関として監事がおかれ、法人の財産状況、理事の職務執行状況等の監査を行うことになるだろう。

○ 監事とは
 監事とは、医療法人の内部管理を目的として、業務や財産などの監査を担当する者のことになる。改正医療法によって、監事の業務が強化されることになった。株式会社では監査役に当たり、原則として1人以上置くことが求められていることに留意しなければならない。
 医療法人の監事には、次の業務が存在している。
(1) 業務あるいは財産の状況について、毎会計年度監査報告書を作成し、当該会計年度終了後3ヶ月以内に社員総会または理事に提出すること。
(2) 業務と財産の状況を監査すること。
(3) (2)の規定による監査の結果、医療法人の業務、財産に関し、不正の行為、法令、定款、寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを都道府県知事、社員総会、評議会員に報告すること。
(4) (3)の報告をするために必要があるときは、社員総会を招集。
(5) 業務と財産の状況について、理事に対して意見を述べること。

 監事は医療法人の業務や財産の状況を監査するために、実際に法人監査業務の実施が不可能な者が名目的に選任されていることは適当ではなく、公平に財務諸表の監査業務を行うことから独立性を担保するため、理事、評議員および法人の職員を兼任していないこと、他の役員と親族等の特殊の関係がある者ではないこととなっている。

<税理士からのPOINT!>
 医療法人の性質をよく理解して、監事を選出することが重要になる。
 取引関係のない知人等の外部の第三者に依頼することが必要であるため、監事の選出に迷う倍は、専門家に相談することが望ましいと考えられる。

医療法人の社会保険について、説明してください。

今年になってから、歯科クリニックを医療法人にすることにした。スタッフが3人しか
いないため、法人化する以前のまま、社会保険の手続きをすることをしなかった。
 その後、医師会の会合で他の先生から「法人になった場合についてはスタッフ数に関係なく、社会保険に加入する必要があるのではないか?」と言われてしまった。

<失敗のポイント>
 歯科クリニックを個人経営していた場合については、5名未満のスタッフ数であれば、社会保険には加入しなくても構わないことになっている。
 その流れで、法人化した場合についても、5名未満のため、社会保険に加入しなくてもよいと考えてしまったようだ。

<正しい対応>
 医療法人になったわけであるため、スタッフ数が、これまでと変わらなくとも社会保険に加入しなければならない。
 個人診療所の場合は常勤5名未満なら強制はされることはないが、法人の場合については、人数に関係なく、強制加入となることに留意しなければならない。

<税法等の解説>
医療法人の社会保険
 法人になると、社会保険に加入する義務が生じることになる。(個人診療所も、常勤が5人以上になると強制加入となる。)

○ 社会保険について
健康保険は、医師国民健康保険・歯科医師健康保険に加入しているケースが多いため、
この方が有利な場合が多いと考えられる。そのため、診療所としては年金事務所に健康保険適用除外申請を行うことになり、厚生年金のみに加入することになる。この場合については、健康保険は医師国民健康保険組合・歯科医師健康保険に、厚生年金は年金事務所に申請手続をすることになる。

○ 対象者
厚生年金の対象者については、常勤社および勤務時間が常勤者の4分の3以上のパート
タイマーとなる。短時間パートタイマーは、厚生年金の対象から外れることになる。

○ 労働保険
労働保険については、そのままの形で法人に引き継がれることになる。もし、法人化し
たのち、時間を置かずに退職した場合についてでも、個人診療所の勤務期間を合算した雇用保険が受給されることになる。ただし、変更の届出手続は必要となる。院長先生や奥様が役員である場合については、原則として、雇用保険および労災保険の対象者ではないことに留意すべきだろう。
 なお、1996年に会計検査院が厚生年金未加入の医療法人や、代表者が未加入の法人などの検査を行い、未加入が発覚した法人については、検査月の1日付けで加入手続を行うことに決定した。その後、医師国保の加入に際して、厚生年金の加入を確認することが増えていることもあるため、注意が必要となる。

○ 法人のデメリット
法人設立によるデメリットとしては、社会保険の強制加入によって義務づけられる社会
保険料が増えることが考えられる。個人病院の場合については、社会保険の加入が任意であるため、働く人が、自分で国民健康保険と国民年金保険料を負担するケースが多いようだが、法人設立後は今まで各自が負担していた社会保険料の半分を法人が支払うことになる。

(例)院長の事業所得1700万円、青色専従者給与の妻の所得600万円、勤務医を含む従業員の給与1500万円の診療所においては、個人で運営している場合についてと医療法人かした場合の保険料の違いについては、以下のようになるようだ。

(1) 個人病院
 国民健康保険料+介護保険料=60万円(市によって上限は違います。)
 国民年金保険料15020円×2人分×12ヶ月分=360480円
 合計 約96万円

(2) 医療法人
 従業員分=163万円
 院長と妻の分=171万円(個人負担額の171万円は、別途、理事報酬から差し引きます。)
 法人負担額合計=334万円

 法人化によって社会保険料の法人負担額が増えることになるようだ。そしてその分経費が増えるので税金が減ることになる。ただし、減少する税額と増加する社会保険料の法人負担額を比べると、社会保険料の方が多くなる。医療法人設立の際については、社会保険料の負担が大きくなることに注意する必要があると考えられる。

<税理士からのPOINT!>
 医療法人の場合、社会保険料の法人負担が増えることになるが、従業員にとっては福利厚生が充実することになる。従業員の確保にあたってはメリットといえるだろう。

ゴルフ会員権とプレイ費について、説明してください。

法人名義で、ゴルフ会員権を購入していた。
普段は、法人と関わりのある方との接待を目的に利用している。
 けれども、私自身もゴルフが大好きであり、時々、競技会に参加している。
 この競技会の参加費用等を法人の交際費とし、計上してしまったところ、税理士から「この参加費用は損金にはならないのではないか?」と指摘されてしまった。

<失敗のポイント>
 個人の趣味で、競技会に参加したゴルフのプレイ代は損金になることはない。

<正しい対応>
(1) このケースでは、どうやら理事長の趣味として競技会に参加してしまっているようですから、個人の役員賞与となり、損金不算入として処理することになる。
(2) 役員賞与ですから、当然個人の給与課税の対象となる。

<税法等の解説>
医療法人のゴルフ会員権と会費
 損金となるものと個人的なものをきちんと区別しておく必要があると考えられる。それによって、損金や役員賞与の対象になるだろう。

○ ゴルフ会員権の入会費
入会費は資産に計上されることになる。また、年会費については、交際費等として経理
処理することになるようである。
 ここで注意しなければならないことは、ゴルフ会員に対する入会金が、法人のその業務遂行上必要かどうかということになる。

○ 業務上必要な場合
業務遂行上必要な場合とは、たとえば接待などの場合については、支出した入会金相当
額を資産として計上することになる。

○ 特定の役員等のための場合
入会金相当額を特定の役員または従業員に対する給与として取り扱うことになる。

○ 年会費
法人がゴルフクラブに支出する年会費、また、年極めのロッカー料金、その他の費用に
ついては、入会金が資産計上されている場合については、交際費としてみなされることになる。
 また、入会金が給与としてみなされている場合については、年会費等も給与として取り扱われることになる。

○ 名義変更
法人会員として入会した後に、その法人の名義人を他の者に変更する場合の名義書き換
え料には、入会金が交際費として取り扱われている場合については、入会金として、給与として取り扱われている場合は、給与としてみなされることになる。また、プレイ料金は、その実質にしたがって、交際費または給与として取り扱われることになる。

<税理士からのPOINT!>
 法人としての利用なのか、個人としての利用なのか、区別をしておくことが重要となるようである。

医療法人の決算書について、説明してください。

今年の損益計算書で所得を確認してみますと、かなりの額の利益が出ていた。
 しかし、貸借対照表を見ても、現預金はそれほど増えていなかった。
 所得の計上がおかしいのだろうか?

<失敗のポイント>
 課税される所得が多くなれば、手元に残る現預金も多くなると勘違いする人が少なくないようである。しかし、課税所得=現預金にはならないことに注意が必要になる。

<正しい対応>
課税所得を求めるための売上・経費は発生主義に基づいて計上されるものになる。そのため、固定資産にかかる減価償却費は経費となるが、実際に支出は生じてはいない。その一方で、借入金の元本返済分は支出はありますが、経費になることはない。このように、課税所得の算出方法と現預金の動きが違うために、違和感を感じられるのかもしれない。多忙な理事長職の傍ら、経理の実務まで理解するのは大変なことであろうが、本事例のように決算書を正しく読むためのいくつかのポイントは最低限おさえておきたい。

<税法等の解説>
医療法人の決算書
 医療法人の決算書は、一般法人の決算書とほとんど変わりはないのですが、医療法人独自の特徴のある科目が存在している。

○ 医療法人の貸借対照表の見方のポイント
(1) 医業未収入金勘定
 貸借対照表の勘定科目で一般法人にはない勘定科目が存在している。それは、流動資産の部の医療未収入金となる。一般法人でいえば売上に対する売掛金に該当する項目となる。売掛金と異なる点は、相手先が社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会であることから、改修時期が一定(原則2ヶ月後)になること、回収不能になるということがまずありえないということになる。決算書に計上されている医業未収入金は、おおむね当該医療法人の事業年度終了前2ヶ月分の保険診療収入(窓口で収受した現金を除きます。)となるようだ。

(2) 医薬品
 棚卸資産として医薬品勘定の金額が多額に計上されている場合については、医療法人内にて薬を調剤していることの推定が可能となる。一人医療法人のように小規模な医療法人では医療法塵埃にて薬剤を調剤していないケース(院外処方といいます。)が最近では多く、その場合については、医薬品の金額は少額となるようである。

(3) 固定資産
 診療科目及び診療の仕方によって設備投資の金額は異なるようである。内科、小児科より外科の方が当然多額の設備投資が必要とされている。また、医療法人が行うことが可能である附帯業務は限られているため、固定資産については、基本的には医療にかかる資産となる。一般法人のように副業としてアパート経営を行うということは、原則として禁止されているようである。

○ 独自の特徴のある項目
(1) 診療報酬収入
 診療報酬収入は診療を行ったときに計上されます。医療法人の収入の大半は保険診療であり、医療法の改正により、影響を受けるという特徴が存在しています。医療法人固有の原因ではなく、制度の改正によって収入が変化することになる。
 また、診療報酬は点数製になっているようである。1点は10円で、例えば診療所の時間内の初診料は270点と定められている。270点かける10円で2700円の売上となる。(病院と診療所とでは異なるようだ。)
 昨今、この点数は財源不足により医療全体で減少傾向となるが、医院が不足している産婦人科・小児科については点数を上げているように厚生労働省の医療政策により変わることになる。
 前年比と比べて診療報酬収入が減少していたとしても、国の背策による減少なのか医療法人自身の原因による減少なのかどちらか、検証することが必要となるだろう。
(2) その他の収入
 医療法人は、原則的には、医療とその附帯業務以外の事業は禁止されているため、医療収入とその附帯業務以外の収入が多額に計上されることはない。そのため投資に係る収入(配当金収入や株式の売却益等)はない。
(3) 売上原価
 医療法人内で調剤しているか、処方箋を書いて外部の薬局にて薬を調剤してもらうかによって、売上原価は大きく変わることになる。
 医療法人内で調剤している場合は薬品の仕入れが計上されることになるため、売上原価の金額は、当然大きくなるようである。
(4) 法人税等
 医療法人の税金計算について、「法人税率」、「社会保険診療報酬に係る概算経費の特例」、「特別法人の特別税率」の特典があり、消費税、事業税も社会保険診療収入については非課税となるため、一般法人より税負担が少なくなっているようである。
(5) 利益処分
 医療法第54条の規定により、剰余金の分配とみなされる行為は禁止されている。したがって、利益処分による配当、役員賞与の支給はない。

<税理士からのPOINT!>
 課税所得=現預金とはならないことに留意しなければならない。キャッシュフローについて専門家に説明してもらうべきだろう。

出資持分の相続対策について、説明してください。

20年前に、医療法人を設立することにした。
 医療法人の理事長を勤める先輩医師により「とにかく理事長としての威光を築いて、できるだけ影響力を長く持ち続けることが大事になる。出資持分も目の黒いうちは誰にも文句を言わせてはいけないだろう。」とアドバイスを受けた。
 すっかりその気になって、顧問税理士にもその意気込みを話したところ、渋い顔をされてしまって、「医大に通う息子さんが後継者になる可能性は考えていないのですか?今から対策を考えておかないと息子さんが相続税で苦しむことになるかもしれませんよ。」と言われてしまった。

<失敗のポイント>
 短期的なガバナンスの問題にとらわれてしまい、中長期的な相続対策まで考えが及ぶことはなかった。

<正しい対応>
 出資持分の評価も上がるので、医療法人の所得が、毎年出るような状況であれば、引退する時に慌てて検討し始めるようなことでは、十分な相続対策をとれないかもしれないだろう。
 そこで、以下のような方策も考えられることになる。
(1) 役員退職金などの大型経費の支出があるときに出資持分の移転を行うことになる。
(2) 医療法人設立後でも早めの移転を検討することになる。

<税法等の解説>
出資持分の相続対策
 遺産分割のトラブルや重い相続税の負担が、病医院の存続に影響することもあるため、事前に相続税のシミュレーションを行うこともあって、納税資金の確保なども含めた対策を講じておくことが必要となる。

○ 相続事業承継対策
出資持分の後継者への承継は、出資持分のある医療法人の理事長にとって、重要課題と
いえるだろう。一般的に、出資持分の評価は、高額となるケースが多く、後継者含め相続人に対しての相続税の影響が大きくなるためとなるでしょう。
 したがって、後継者含め、相続人の負担する相続税がどれくらいの金額になるのかを事前に把握することにして、長期的に、相続税対策を検討することが重要となる。

○ 理事長の相続における事前留意点
理事長個人の相続財産・債務の全体像を把握した上で、相続税納税資金の有無やその必
要額を確認することにし、後継者含め相続人へどのように財産を分割するのかを検討することにする。
 また、一例として以下のような事前確認が考えられる。

(1) 医業用不動産(土地・建物)の所有者は理事長か?
 相続財産は相続税評価額によって評価することになるが、一定の要件を満たした土地である場合において、「小規模宅地についての相続税の課税価格の計算の特例」という制度によっては、最高80パーセントの評価減の適用が可能となる。

(2) 理事長の出資持分の評価はどれくらいあるか?
 出資持分は、次期後継者が承継していくと考えられるため、理事長個人の相続財産のうち、出資持分がどれくらいの評価額になるかを把握することは重要となる。

(3) 理事長からの医療法人への貸付金はあるか?
 理事長からの医療法人への貸付金(医療法人にとっては借入金)は、理事長個人への相続税財産となる。

(4) 理事長個人の財産のうち換金可能財産はどれくらいあるのか?
 相続税納税資金の確保や後継者以外の相続人に対する分割財産を確保できるのかを確認するべきだろう。

○ 出資持分を事前に評価する重要性
医療法人の理事長の相続を考えた場合において、医療法人の出資持分は理事長の相続税
財産のうち最も重要な財産の一つとなる。
 その評価は、相続時点での評価額となるようであるが、医療法人は配当金を出すことが法律上禁止されているため、長期間利益が出ている法人は法人内部に利益が留保することにし、出資持分の評価が設立当初に出資した金額を大きく上回ることが少なくないだろう。
 そして、出資持分の評価が高額になり、後継者に医業承継財産が集中した場合については、出資持分は換金性がないため、次期後継者となる相続人の納税資金が不足するケースも考えられる。
 したがって、次期後継者のスムーズな事業承継を行う目的のためには、まずは現状における医療法人の出資持分の評価をすることにして、次期後継者に与える相続税の負担がどれだけの金額になるのかをシミュレーションすることが重要となってくる。

○ 出資持分の相続税対策
出資持分が高額になっている場合において、後継者には多額の納税が発生することが想
定されることになる。したがって、前もって出資持分の評価の引き下げを図って、持分の一部を後継者に移転させることにより相続財産自体を理事長から切り離すことや、どのようにして納税資金の確保が可能となるのかを検討することが重要となってくるだろう。

(1) 出資持分の評価の引き下げの一例
 代表的な方法としては、理事長の勇退による退職金の支払が考えられる。
 退職金を支払った時等、多額の経費が発生する時には法人の純資産が減少するため持分の評価は下がることになる。そのタイミングで出資持分を後継者に移転するとよいだろう。なお、移転の方法としては、贈与と譲渡の2つが存在している。

(2) 納税資金の確保の一例
 すでに後継者が医療法事の理事長である場合については、不相当に高額な役員報酬とならない範囲で、ある程度将来の納税資金を意識した役員報酬を設定するべきだろう。
 その他、生命保険を活用することにして、理事長に相続が発生した時において、医療法人が遺族(後継者)に支給する死亡退職金の納税資金とする方法なども考えられる。

内部利益を備蓄すると出資持分の評価が高くなることになる。
設立当初の出資金:900万円
その他:100万円

出資金:1000万円
理事長:900万円
他:100万円
↓税引後利益:800万円
理事長:1620万円
他:180万円
↓税引後利益:800万円
理事長:2340万円
他:260万円

出資金評価額:2600万円

※ 医療法54条により配当は禁止されていることになる。

<税理士からのPOINT!>
 相続対策では、相続人官でのトラブルが生じやすくなってしまうため、あらかじめ専門家に相談し、相続対策をしておくことがポイントとなる。

医療法人の関係法令が分からず、困っています。

私は医療法人理事を10年前の法人設立時より務めています。この法人は今期中間決算でかなり良い成績をあげることができました。この調子でいけば、本決算も昨年の数倍の成績をあげることができそうです。この好調のお礼として、出資者に配当を出そうと考えたのですが、相談した税理士に「配当を出すことは法令違反だ」と言われてしまいました。私は出資者に配当を出すことが出来ないのでしょうか?

失敗のポイント
『医療法』『医療法施行令』『医療法施行令規則』について知っていることが、医療法人を理解する上で必須のものとなっています。
そして、医療法は、医療提供体制の確保と国民の健康の保持のため制定されています。ですからこれらの目的外の理由、たとえば営利目的での病院や診療所開設は認められませんし、医療法人が剰余金の分配を行うことも当然認められません。

※配当金とは、株主に対し、その有する株式数に比例して分配されるお金のことです。株主や会社が得た利益の一部が支払われます。投資信託あるいは特定受益証券発行信託において分配されるお金も配当金です。

正しい対応
 医療法人は、①医療事業の中でも公益性の高い事業を行うこと②利潤が生まれても出資者に剰余金の分配ができないこと③決算を営利法人と同様に行うこと、などの特徴がある、公益法人でも営利法人でも、会社法における会社とも似て非なる法人です。医療法人設立に際しては、これらの特徴を理解しておきましょう。

[税法等の解説]
医療法人の関係法令
医療法第54条 剰余金の配当禁止
医療法人は、剰余金を配当できないことが医療法で定められています。

医療法第54条 [剰余金の配当禁止]
 医療法人は剰余金を出資者に還元できません。剰余金は、医療活動の将来の充実のために預金するか、国公債費等の元本保証のある資産とする以外は、施設整備あるいは職員の待遇改善にしか使うことはできません。また、配当に限らず、事実上の分配と考えることができる行為は全て禁止です。
 
事実上の利益分配と見なされる行為の例
・不当な理由で医療法人が役員、社員やその親族(=親族等)に資産を貸し付けること。
・役員等やMS法人が持つ財を医療法人が賃借し、またその額が合理性のない金額であること
・役職員が退職時に得る退職金が不当に高い額であり、その額となった理由が不明瞭であること。
・役職員の給与ないし役員報酬が、その働きぶりと合っていない額であること。
・医療法人が他人の債務の保証人となること
・医療法人名義の債務の中に、役員等の債務の名義を書き換えたものを含めること。

医療法人が剰余金を配当していないかどうかを、都道府県は厳しくチェックしています。仮に剰余金の配当をはじめとした利益分配行為が行われていることが発覚した場合、20万円以下の罰金が理事や監事に科されることが医療法第76条第5項には定められています。このような行為が行われていないかどうか、確認しておきましょう。

医療法
 医療提供体制の確保によって国民の健康を維持することを目的に、医療法は制定されました。昭和23年のことです。この医療法で、営利活動を目的とした病院や診療所は認められなくなりました。そのため、配当も否定されました。 
営利活動は否定されていますが、資金を集めやすくし、経営を安定させることで医療事業を公の機関以外が担いやすくするため、医療事業主体の法人化は認められています。
なお、この医療法人の根拠法令は、医療法、医療法施行令、医療法施行規則の3つとなっています。

医療法人の非営利性
 先述の通り、医療法人は公益法人でもなく、営利法人でもないため株式会社でもない、公共性のある医療事業を行う法人であり、剰余金の配当が出来ないことが特徴です。

税理士からのPOINT!
 剰余金の使途の見極めは難しいですが、設備整備や職員の待遇改善に使うことは間違いなく可能です。剰余金をうまく利用できるように考えてみましょう。