医療法人の決算書について、教えてください。

今年の損益計算書で所得を確認してみると、かなりの額の利益が出ていました。
 しかし、貸借対照表を見ても、現預金はそれほど増えていませんでした。
 所得の計上がおかしいのでしょうか?

<失敗のポイント>
 課税される所得が多ければ、手元に残る現預金も多いと勘違いする人が少なくないようです。しかし、課税所得=現預金にはなりません。

<正しい対応>
課税所得を求めるための売上・経費は発生主義に基づいて計上されるものです。そのため、固定資産にかかる減価償却費は経費ですが、実際に支出は生じていません。その一方で、借入金の元本返済分は支出はありますが、経費にはなりません。このように、課税所得の算出方法と現預金の動きが違うために、違和感を感じられるのかもしれません。多忙な理事長職の傍ら、経理の実務まで理解するのは大変なことですが、本事例のように決算書を正しく読むためのいくつかのポイントは最低限おさえておきたいところです。

<税法等の解説>
医療法人の決算書
 医療法人の決算書は、一般法人の決算書とほとんど変わりありませんが、医療法人独自の特徴のある科目があります。

○ 医療法人の貸借対照表の見方のポイント
(1) 医業未収入金勘定
 貸借対照表の勘定科目で一般法人にはない勘定科目があります。それは、流動資産の部の医療未収入金です。一般法人でいえば売上に対する売掛金に該当する項目です。売掛金と異なる点は、相手先が社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会であることから、改修時期が一定(原則2ヶ月後)であること、回収不能になるということがまずありえないということです。決算書に計上されている医業未収入金は、おおむね当該医療法人の事業年度終了前2ヶ月分の保険診療収入(窓口で収受した現金を除きます。)となります。

(2) 医薬品
 棚卸資産として医薬品勘定の金額が多額に計上されている場合は、医療法人内にて薬を調剤していることが推定できます。一人医療法人のように小規模な医療法人では医療法塵埃にて薬剤を調剤していないケース(院外処方といいます。)が最近では多く、その場合は、医薬品の金額は少額となります。

(3) 固定資産
 診療科目及び診療の仕方によって設備投資の金額は異なります。内科、小児科より外科の方が当然多額の設備投資が必要とされています。また、医療法人が行うことができる附帯業務は限られているので、固定資産については、基本的には医療にかかる資産です。一般法人のように副業としてアパート経営を行うということは原則として禁止されています。

○ 独自の特徴のある項目
(1) 診療報酬収入
 診療報酬収入は診療を行ったときに計上されます。医療法人の収入の大半は保険診療であり、医療法の改正により、影響を受けるという特徴があります。医療法人固有の原因ではなく、制度の改正によって収入が変化します。
 また、診療報酬は点数製になっています。1点は10円で、例えば診療所の時間内の初診料は270点と定められています。270点かける10円で2700円の売上となります。(病院と診療所とでは異なります。)
 昨今、この点数は財源不足により医療全体で減少傾向ですが、医院が不足している産婦人科・小児科については点数を上げているように厚生労働省の医療政策により変わります。
 前年比と比べて診療報酬収入が減少していたとしても、国の背策による減少なのか医療法人自身の原因による減少なのか、検証することが必要です。
(2) その他の収入
 医療法人は、医療とその附帯業務以外の事業は原則的には禁止されているので、医療収入とその附帯業務以外の収入が多額に計上されません。そのため投資に係る収入(配当金収入や株式の売却益等)はありません。
(3) 売上原価
 医療法人内で調剤しているか、処方箋を書いて外部の薬局にて薬を調剤してもらうかによって、売上原価は大きく変わります。
 医療法人内で調剤している場合は薬品の仕入れが計上されますので、売上原価の金額は当然大きくなります。
(4) 法人税等
 医療法人の税金計算について、「社会保険診療報酬に係る概算経費の特例」、「法人税率」「特別法人の特別税率」の特典があり、消費税、事業税も社会保険診療収入については非課税となるため、一般法人より税負担が少なくなっています。
(5) 利益処分
 医療法第54条の規定により、剰余金の分配とみなされる行為は禁止されています。したがって、利益処分による配当、役員賞与の支給はありません。

<税理士からのPOINT!>
 課税所得=現預金とはなりません。キャッシュフローについて専門家に説明してもらいましょう。