福利厚生費についてが、わかりません。

今年で、医療法人設立5周年を迎えることができました。その記念として、慰安旅行を
計画しました。
そこで、スタッフに慰安旅行の参加を募ってみたところ、参加者がスタッフ全体の半分
にも満たなかったのですが、せっかくの機会ですので旅行を実施することにしました。
 この旅行費用を福利厚生費として処理しようとしましたが、専門家から「今回の旅行は、慰安旅行としての要件を満たしていないため、福利厚生費にはなりませんよ。」と指摘を受けてしまいました。

<失敗のポイント>
 役員と従業員を含めて50%以上の参加者がいない場合については、福利厚生費にはならないことに注意しなければなりません。

<正しい対応>
 このケースの場合については、参加者が半分に満たなかったと書いてありますので、福利厚生費にはならないと考えられるでしょう。
 福利厚生費にするための要件をしっかりと理解し、本事例の場合については、50%以上の参加者を募ることができるように、スタッフの事情に合った旅行プランを企画することが大切となるでしょう。

<税法等の解説>
医療法人の慰安旅行
 慰安旅行については要件を満たし、豪華すぎないもの、法人負担が多額でないものが条件となります。

○ 慰安旅行の要件
医療法人が役員や従業員のレクリエーションのため、解釈や旅行等の費用を負担した場
合において、それが社会通念上、一般に行われている範囲であるのならば、福利厚生費として計上することが可能となります。ただし、慰安旅行については次の要件を満たす必要があると考えられます。
(1) 旅行期間が、4泊5日以内であること。
(2) 参加する従業員の割合が50%以上であること。

 上記の要件を満たしていたとしても、あまりに豪華であったり、法人負担が高額だったりすると、福利厚生費として認められることはなく、1人当たりの法人負担によって給与所得とみなされる場合もあります。

○ 慰安旅行の具体例
旅行にかかる費用が、対象になるでしょう。鉄道や航空運賃、ホテルや旅館の宿泊費、食事代などが挙げられます。

○ 慰安旅行はすべて経費として認められるか。
一般的に法人負担分は、福利厚生費として全額損金算入が認められることになります。
ただし、場合によっては交際費や給料、役員賞与扱いになる場合も存在しているため、注意が必要となるでしょう。

○ 福利厚生費が認められる範囲
社会通念上、一般的と認められる範囲の慰安旅行の費用は福利厚生費となり、旅行に参
加した人の給与課税(源泉徴収)をしなくてもよいことになっております。福利厚生費として認められる条件は、以下のとおりとなります。

(1) 旅行費用の法人負担分が少額であること。
 旅行自体は豪華なものであったとしても、法人負担分が10万円程度であれば範囲内となるでしょう(参考:平成22年国税不服審判所判例、国税庁タックスアンサー#2603)。法人負担分が10万円で、従業員負担分が全くないような場合も認められることになります。つまり、法人負担が10万円を超えなければ許容範囲と考えられるでしょう。

(2) 旅行中の行事が一般的であること。
 例えば、1泊2日の格安な旅行であっても、全員参加のゴルフ大会が催されるような場合は、一般的とはみなされることはありません。

(3) 旅行の期間は4泊5日以内。
 海外旅行の場合には、機内泊は除外し、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。

(4) 従業員全員を対象とし、参加人数が全体の半分以上であること。
 工場や支店ごとに行われる旅行の場合については、それぞれの職場ごとの人数の半分以上が参加する必要があるでしょう。

(5) 自己都合で参加を見合わせた者に金銭を受給しないこと。
 上記のすべての条件を満たしていても、以下のような場合については、従業員のレクリエーションを目的とした旅行とはみなされないことになるため、役員賞与、給与あるいは交際費として処理することになるでしょう。

・ 役員賞与となるもの・・・・・・役員だけで行う旅行。
・ 役員賞与、給与手当となるもの
実質的に私的旅行と認められる旅行や金銭との選択が可能な旅行。
・ 交際費となるもの・・・・・・取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行。

<税理士からのPOINT!>
 従業員の家族が慰安旅行に同伴する場合については、家族分は社会通念上、一般的な慰安旅行と認められないため、本人負担としておくのがよいと考えられます。

医療法人の関係法令について、教えてください。

10年前に医療法人を設立いたしました。設立当初から理事をしております。
今期中間決算で多くの利益を出し、本決算でも昨年の何倍かの利益が想定されていて、出資者に配当金を出したいと思っています。
そこで、税理士に相談したところ、この剰余金の分配は違法行為だという指摘を受けました。

<失敗のポイント>
 医療法人の根拠法令としては、「医療法」、「医療法施行令」および「医療法施行規則」があります。
 医療法は昭和23年に、「医療を提供する体制の確保を図り、もって、国民の健康の保持に寄与する」ことを目的に制定された法律です。したがって、営利を目的として病院、診療所等を開設することは否定されています。もちろん、このケースのような剰余金の分配も禁止されています。

※ 配当金:配当金は、企業や主催者から利益の一部を分配金として受け取るお金のことです。株式会社の場合、株主が所有している株式数に応じて、分配金として受取ります。投資信託や特定受益証券発行信託の分配なども、配当金に相当します。

<正しい対応>
  医療法人は、公益性が高い医療事業の経営を主たる目的としていますが、公益法人とは区別されています。
 一方、剰余金の分配禁止により営利法人たることを否定されているので、会社法上の会社とも区別されています。
 決算なども営利法人等と同様に行われますが、いくら、利益が拡大しようとも、出資者等に利益を分配することはできません。このようなことをあらかじめ医療法人設立の際に、理解しておくことが重要です。

<税法等の解説>
医療法人の関係法令
医療法第54条 剰余金の配当禁止
医療法人は、剰余金の配当が禁止されています。

○ 医療法第54条「剰余金の配当禁止」
医療法人は、剰余金の配当が禁止されています。医療法人で収益が生じた場合には、施設の整備、法人職員の待遇改善等に充てる以外は、医療の充実のための積立金として預金・国交債等元本保証のある資産によって、留保しなければなりません。また、特に注意すべきこととして、配当ではなくても、事実上利益の分配とみられる行為も禁止されています。

○ 事実上の利益分配と考えられる行為の例
・ 正当な根拠がなく、役員および社員もしくはこれらの者と親族関係にある者(以下、役員等とします。)に対して、医療法人の資金等を貸し付けること。
・ 医療法人が、役員等やMS法人が所有等している試算を過大な賃借料で賃借すること。
・ 役職員に対して、算定根拠や支払根拠が不明確、または額が過大な退職金を支払うこと。
・ 役職員の勤務実態と比較して、過大な給与または役員報酬の支払いをすること。
・ 医療法人が第三者(役員等を含む)の債務を保証すること。
・ 第三者名義(役員等を含む)の債務を医療法人へ名義を移転すること。

医療法人の剰余金の配当禁止については、都道府県庁も厳密に取り締まっています。
事実上の利益分配と考えられる行為の有無をご確認ください。
 また、医療法人が剰余金の配当をした場合、または事実上の利益分配と考えられる行為をした場合は、医療法第76条第5項規定によって、理事または監事は、20万円以下の過料に処されます。

○医療法
 医療法人の根拠法令としては、医療法、医療法施行令および医療法施行規則があります。
 医療法は昭和23年に、「医療を提供する体制の確保を図り、もって、国民の健康の保持に寄与する」ことを目的に制定された法律で、営利を目的として病院、診療所等を開設することは否定されており、また配当も禁止されています。
 医療法人制度の目的は、医療事業の経営主体を法人化することにより(1)資金の集積を容易にするとともに、(2)医療機関等の経営に永続性を付与し、私人による医療事業の経営困難を緩和することにあります。

○ 医療法人の非営利性
医療法人は、その主たる目的が(公共性の高い)医療事業の経営ですが、公益法人とは
みなされていません。また、剰余金の配当が禁止されているなど、営利法人の枠からも除外されており、株式会社とは一線を画す法人形態といえます。

<税理士からのPOINT!>
 剰余金の用途には、設備投資や法人職員の待遇改善など認められている範囲もありますので、有効な活用方法を検討するとよいでしょう。

医療法人の認可はどのような仕組になっているのか。

Q.私は内科医院を、都内で数年前から経営している。患者数は徐々に増え、個人所得もクリニック開設当時の3倍となった。
 そこで私はクリニックの法人化を検討し、株式会社設立のときの手順と同様に定款を作成した。しかし登記の準備を進めていると知人から「都道府県の認可制なのでは?」との指摘を受けた。医療法人となるには、都道府県の認可が必要だったのだ。しかしそのことを私が知った時には、既に今年度の医療法人の設立認可申請書の提出期限が過ぎていた。私は申請することができなかった。来年度に失敗することのないよう、医療法人化に向けた正しい取り組みを教えてほしい。

<解答>
医療法人の設立は届出制と間違われやすいが、実は都道府県の認可制である。しかも、届出をすれば毎々医療法人の認可が下りる、というわけではない。一般的に受付は年に2回であり(自治体によっては3回である)、受付期間を過ぎれば当然申請はできない。

正しい対応
1)医療法人設立は、計画性をもって行うことが重要である。
2)都道府県の保健局のホームページには、医療法人設立認可に関わる年間スケジュールが掲載されているので参照すると良い。
3)先述のとおり一般的に申請は年に2回となっており、設立説明会が申請受付の前に行われる都道府県もある。この設立説明会に参加し、申請書類の種類やその作成方法の理解を深めておくと良い。
4)仮申請から認可を受け、実際に法人としての診療活動をスタートするまでには、半年ほどの期間を要する。

[税法等の解説]
医療法人設立認可申請手続き
①医療法人設立認可申請手続が可能なのは、医療法人の設立を予定している者である。
②医療法人設立認可に際して、申請者は提出書類や受付方法などを理解していることが求められる。

設立認可までのスケジュール
 東京都を例にとると、9月初旬が申請仮受付期間となっている。9月初旬の申請受付後から同年12月までが設立認可審査期間となっている。
 設立認可審査後に、設立認可申請書の本申請を行われ、翌年1月末に医療審議会での諮問と答申がなされる。2月中旬から下旬に『設立認可書』が交付される。
 つまり、設立申請をしてから晴れて認可が下りるまでには、5~6ヶ月間の期間を要するのである。

申請書仮受付の書類
 医療法人設立認可申請書は次のページに挙げる書類が必要である。
 書類一式は、郵送か持込にて提出しなければならない。
 その他の注意点としては、提出書類に押印をしないことや、謄本や印鑑証明等に原本を添付せず、コピーを添付するなどがある。
 申請書の仮受付は、上記の方法以外ではできない。

申請に関わる料金
 申請および認可に手数料は要しない。

申請にかかわる質問
 例えば東京都では、直接電話での質問は受け付けていない。質問は原則ファクシミリのみで行う。申請に関する質問の対応は、都道府県によって様々なので、ホームページ等で確認すること。

医療法人設立認可書類一覧(平成24年東京都の場合)
項目 様式 注意事項
医療法人設立認可申請書 1 日付は東京都が指定した日
定款(寄附行為)
設立総会議事録 2 仮受付より以前の開催日付
財産目録 3 基準日あり
財産目録明細書 4 基準日あり
不動産鑑定評価書 不動産を拠出する場合
減価償却計算書 5 基準日あり
基金に関する書類 6-1~4 基金制度を採用する場合
預金残高証明書 発行日から3ヶ月以内のもの
負債内訳書 7-1、2 基準日あり
負債説明資料 8
負債根拠資料 (例)工事請負契約書、領収書等
債務引継承認願 9-1~3
リース物件一覧表 10 物件名、数量、業者名簿等を記載
リース契約書(写し) 現行のものの写し
リース引継承認願 11
役員・社員名簿 12 基準日あり
履歴書 13 設立総会の日付
印鑑証明 できるだけ新しいもの
委任状 14 設立総会の日付
役員就任承諾書 15 設立総会の日付
管理者就任承諾書 16 設立総会の日付
管理者医師免許証(写し) 原寸大
理事長医師免許証(写し) 原寸大
理事医師免許証(写し) 原寸大
医療施設の概要 17
周辺の概略図 最寄駅等、交通経路を表示する
建物平面図 1/100,1/200程度のもの
不動産賃貸借契約書(写し) 現行のものの写し
賃貸借契約引継承認書(覚書) 18
土地・建物登記事項証明書 契約の目的物となっている建物等
事業計画書(2ヵ年又は3ヵ年)20 
予算書 21
予算明細書
職員給与費の内訳書
実績表(2年分) 24 設立場所における実績が浅い場合(確定申告の場合等)は直近までの試算表を添付すること
確定申告(2年分) 申告受領印付の写し全部(付表を含む)
診療所の開設届けの写し 個人診療所の開設実績のある場合
※拠出(寄附)申込書の添付は不要となった。

現在の診療所において2年以上、個人で開設している場合に開設する医療法人は、様式14の『委任状』、様式20の『設立後2年間の事業計画』、様式21~23の設立後2年間の予算書の提出を省略が可能である。
この場合の診療所は、医師又は歯科医師が1人ないし2人常勤する診療所を指している。
また、過去2年間の黒字確定申告書を添付できる。その場合、医療法人設立後の2年間での事業変更がないことが添付の条件となっている。

税理士からのPOINT!
 医療法人は、認可制であるため、申請時期が設けられている。設立の準備を進めていく上で、申請時期を確認することが重要である。

一人医師医療法人が分からない。

Q.私は歯科クリニックを経営する歯科医師だ。節税面での効果を期待し医療法人化を考えたが、我がクリニックの医師は私1人だ。「法人」と称するにふさわしい経営は出来ないのではないかと感じている。私はこのまま医療法人化出来ないのだろうか。

<解答>
誤解を受けやすいが、医療法人は大規模なもののみを指すのではない。勘違いをして、経営プランから外してしまったようだ。

正しい対応
 経営規模が小さい場合、「医療法人」となることが出来ないとイメージする人も多いが、医療法人は数の上では「一人医師医療法人」が大半である。医療法人化に利点があると考えたならば、医師が1人であっても法人化を検討すべきだ。

[税法等の解説]
一人医師医療法人
 昭和60年に医療法が改正され、それまで病院または常勤の医師数が3人以上の診療所に限られていた医療法人の設置が、3人未満の診療所にも認められるようになった。こうして生まれた「一人医師医療法人」はその法人設立、法人運営、また法人としての権利や義務において他の一般的な医療法人との差異はない。

一人医師医療法人の特徴
 医療法人の中でも常勤医師あるいは歯科医師が3人未満であること。

税理士からのPOINT!
医療法人化は、診療所の社会的信用を高めることや、ご子息への事業承継に有効だ。ただし、難点として損金に交際費を参入する際の限度額があることなどが挙げらるので、十分に検討を重ねてほしい。また、医療法人へ移行する前には税理士に、個人診療所として開設する場合と一人医師医療法人として開設する場合との税額面での比較を依頼し、移行が妥当な判断か相談すると良い。

医療法人の機関について、教えてください。

神奈川県で医療法人を設立して5年が経ちます。監事を何かと便宜の図れる親族の者に
替えたいと思い、選出いたしました。
 すると、神奈川県の衛生局から監事の変更について連絡があり、親族は就任できないので、選出しなおしてくださいと言われてしまいました。

<失敗のポイント>
(1) このケースの場合、監事は、法人の財産状況および理事の業務執行状況を監査する職務であることを理解していないようです。
(2) 親族者および医療法人と取引関係のある者は監事には就任できません。

<正しい対応>
(1) まずは、監事を変更するのであれば、第三者に依頼しましょう。さらに、取引関係のない知人等の外部の第三者であることが必要です。
(2) 親族が監事になると確かに便宜が図れると思います。しかし、医療法人を監査する職務を遂行することは、親族であるために、かえって難しくなります。5年間、監事を行ってきた方が継続できなければ、第三者の選出が必要です。
しかし、便宜を図ってもらいたいというのであれば、もう一度考え直してみてはいかがでしょうか。現在の監事が、監査の職務の適任かどうかを考えることが大切です。

<税法等の解説>
医療法人の機関
 医療法人社団の運営機関には、社員総会、理事会並びに監事があります。
 医療法人財団の運営機関には、理事会、評議員会並びに監事があります。

○ 医療法人社団とは
医療法人社団においては、社員総会が法人の最高意思決定機関です。
ここでの法人運営の重要な事項については、社員総会の議決が必要となります。
 医療法人社団には、運営機関として社員総会と理事会の2つが設置されており、社員総会は、定時総会と臨時総会とに分けられます。

○ 医療法人の行う行為について
 法人の行う行為は、すべて定款等法令または社員総会の決定に拘束され、理事長といえども独断で処理することはできません。
 日常の業務については、社員総会等の委任を受けているものとみなしますが、一定の範囲を超える新たな業務(高価な物品の購入、改修、借入金)は、必ず法人の最高意思決定機関である社員総会の議決にて決定します。
 社員総会は、定款の定めにより定期的に開催する必要があります。また、定款の定めるところにより、議決すべき議題がある場合には、その度に臨時総会を開催することができます。

○ 理事会とは
理事会は、社員総会で決定された事項を執行する機関です。また、これを監査する機関
として監事がおかれ、法人の財産状況、理事の職務執行状況等の監査を行うことになります。

○ 監事とは
 監事とは、医療法人の内部管理を目的として、業務や財産などの監査を担当する者のことです。改正医療法によって、監事の業務が強化されました。株式会社では監査役に当たり、原則として1人以上置くことが求められています。
 医療法人の監事には、次の業務があります。
(1) 業務と財産の状況を監査すること。
(2) 業務又は財産の状況について、毎会計年度監査報告書を作成し、当該会計年度終了後3ヶ月以内に社員総会または理事に提出すること。
(3) (1)の規定による監査の結果、医療法人の業務、財産に関し、不正の行為、法令、定款、寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを都道府県知事、社員総会、評議会員に報告すること。
(4) (3)の報告をするために必要があるときは、社員総会を招集。
(5) 業務と財産の状況について、理事に対して意見を述べること。

 監事は医療法人の業務や財産の状況を監査するため、実際に法人監査業務を実施できない者が名目的に選任されていることは適当でなく、公平に財務諸表を監査業務を行うことから独立性を担保するため、理事、評議員および法人の職員を兼任していないこと、他の役員と親族等の特殊の関係がある者ではないこととされています。

<税理士からのPOINT!>
 医療法人の性質をよく理解して、監事を選出することです。
 取引関係のない知人等の外部の第三者に依頼することが必要ですから、監事の選出に迷う倍は、専門家に相談することが望ましいです。

医療法人の社会保険について、教えてください。

今年になって、歯科クリニックを医療法人にしました。スタッフが3人しかいないので、
法人化する以前のまま、社会保険の手続きをしませんでした。
 その後、医師会の会合で他の先生から「法人になった場合はスタッフ数に関係なく、社会保険に加入しなければならないのでは?」と言われました。

<失敗のポイント>
 歯科クリニックを個人経営していた場合には5名未満のスタッフ数であれば、社会保険には加入しなくても構いません。
 その流れで、法人化した場合にも、5名未満のため、社会保険に加入しなくてもよいと考えてしまいました。

<正しい対応>
 医療法人になったわけですから、スタッフ数が、これまでと変わらなくとも社会保険に加入しなければなりません。
 個人診療所の場合は常勤5名未満なら強制はされませんが、法人の場合は、人数に関係なく、強制加入となります。

<税法等の解説>
医療法人の社会保険
 法人になると、社会保険に加入する義務が生じます。(個人診療所も、常勤が5人以上になると強制加入となります。)

○ 社会保険について
健康保険は、医師国民健康保険・歯科医師健康保険に加入しているケースが多く、この
方が有利な場合が多いでしょう。そのため、診療所としては年金事務所に健康保険適用除外申請を行い、厚生年金のみに加入することになります。この場合は、健康保険は医師国民健康保険組合・歯科医師健康保険に、厚生年金は年金事務所に申請手続をします。

○ 対象者
厚生年金の対象者は、常勤社および勤務時間が常勤者の4分の3以上のパートタイマー
です。短時間パートタイマーは、厚生年金の対象から外れます。

○ 労働保険
労働保険は、そのままの形で法人に引き継がれます。もし、法人化したのち、時間を置
かずに退職した場合でも、個人診療所の勤務期間を合算した雇用保険が受給されます。ただし、変更の届出手続は必要です。院長先生や奥様が役員である場合は、原則として雇用保険および労災保険の対象者ではありません。
 なお、平成8年に会計検査院が厚生年金未加入の医療法人や、代表者が未加入の法人などの検査を行い、未加入が発覚した法人については、検査月の1日付けで加入手続を行うことになりました。その後、医師国保の加入に際して、厚生年金の加入を確認することが増えていますので、注意が必要です。

○ 法人のデメリット
法人設立によるデメリットとしては、社会保険の強制加入によって義務づけられる社会
保険料が増えることが考えられます。個人病院の場合は、社会保険の加入が任意であるため、働く人が自分で国民健康保険と国民年金保険料を負担するケースが多いですが、法人設立後は今まで各自が負担していた社会保険料の半分を法人が支払うことになります。

(例)院長の事業所得1700万円、青色専従者給与の妻の所得600万円、勤務医を含む従業員の給与1500万円の診療所において、個人で運営している場合と医療法人かした場合の保険料の違いは、以下のようになります。

(1) 個人病院
 国民健康保険料+介護保険料=60万円(市によって上限は違います。)
 国民年金保険料15020円×2人分×12ヶ月分=360480円
 合計 約96万円

(2) 医療法人
 従業員分=163万円
 院長と妻の分=171万円(個人負担額の171万円は、別途、理事報酬から差し引きます。)
 法人負担額合計=334万円

 法人化によって社会保険料の法人負担額が増えることになります。そしてその分経費が増えるので税金が減ります。ただし、減少する税額と増加する社会保険料の法人負担額を比べると、社会保険料の方が多くなります。医療法人設立の際には、社会保険料の負担が大きくなることに注意する必要があります。

<税理士からのPOINT!>
 医療法人の場合、社会保険料の法人負担が増えますが、従業員にとっては福利厚生が充実することになります。従業員の確保にあたってはメリットといえるでしょう。

ゴルフ会員権とプレイ費について、教えてください。

法人名義でゴルフ会員権を購入しております。
普段は、法人と関わりのある方との接待に利用しております。
 けれども、私自身もゴルフが大好きで、時々、競技会に参加しております。
 この競技会の参加費用等を法人の交際費とし、計上したところ、税理士から「この参加費用は損金にはならないのではないか?」と指摘されてしまいました。

<失敗のポイント>
 個人の趣味で、競技会に参加したゴルフのプレイ代は損金にはなりません。

<正しい対応>
(1) このケースでは、どうやら理事長の趣味として競技会に参加しているようですかた、個人の役員賞与となり、損金不算入として処理します。
(2) 役員賞与ですから当然個人の給与課税の対象です。

<税法等の解説>
医療法人のゴルフ会員権と会費
 損金となるものと個人的なものをきちんと区別しておく必要があります。それによって、損金や役員賞与の対象になります。

○ ゴルフ会員権の入会費
入会費は資産に計上されます。また、年会費は、交際費等として経理処理することにな
ります。
 ここで注意しなければならないことは、ゴルフ会員に対する入会金が、法人のその業務遂行上必要かどうかということです。

○ 業務上必要な場合
業務遂行上必要な場合とは、たとえば接待などの場合には、支出した入会金相当額を資
産として計上します。

○ 特定の役員等のための場合
入会金相当額を特定の役員または従業員に対する給与として取り扱います。

○ 年会費
法人がゴルフクラブに支出する年会費、また、年極めのロッカー料金、その他の費用は、
入会金が資産計上されている場合は、交際費としてみなされます。
 また、入会金が給与としてみなされている場合は、年会費等も給与として取り扱われます。

○ 名義変更
法人会員として入会した後に、その法人の名義人を他の者に変更する場合の名義書き換
え料は、入会金が交際費として取り扱われている場合は、入会金として、給与として取り扱われている場合は、給与としてみなされます。また、プレイ料金は、その実質にしたがって、交際費または給与として取り扱われます。

<税理士からのPOINT!>
 法人としての利用なのか、個人としての利用なのか、区別をしておくことが重要です。

医療法人の決算書について、教えてください。

今年の損益計算書で所得を確認してみると、かなりの額の利益が出ていました。
 しかし、貸借対照表を見ても、現預金はそれほど増えていませんでした。
 所得の計上がおかしいのでしょうか?

<失敗のポイント>
 課税される所得が多ければ、手元に残る現預金も多いと勘違いする人が少なくないようです。しかし、課税所得=現預金にはなりません。

<正しい対応>
課税所得を求めるための売上・経費は発生主義に基づいて計上されるものです。そのため、固定資産にかかる減価償却費は経費ですが、実際に支出は生じていません。その一方で、借入金の元本返済分は支出はありますが、経費にはなりません。このように、課税所得の算出方法と現預金の動きが違うために、違和感を感じられるのかもしれません。多忙な理事長職の傍ら、経理の実務まで理解するのは大変なことですが、本事例のように決算書を正しく読むためのいくつかのポイントは最低限おさえておきたいところです。

<税法等の解説>
医療法人の決算書
 医療法人の決算書は、一般法人の決算書とほとんど変わりありませんが、医療法人独自の特徴のある科目があります。

○ 医療法人の貸借対照表の見方のポイント
(1) 医業未収入金勘定
 貸借対照表の勘定科目で一般法人にはない勘定科目があります。それは、流動資産の部の医療未収入金です。一般法人でいえば売上に対する売掛金に該当する項目です。売掛金と異なる点は、相手先が社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会であることから、改修時期が一定(原則2ヶ月後)であること、回収不能になるということがまずありえないということです。決算書に計上されている医業未収入金は、おおむね当該医療法人の事業年度終了前2ヶ月分の保険診療収入(窓口で収受した現金を除きます。)となります。

(2) 医薬品
 棚卸資産として医薬品勘定の金額が多額に計上されている場合は、医療法人内にて薬を調剤していることが推定できます。一人医療法人のように小規模な医療法人では医療法塵埃にて薬剤を調剤していないケース(院外処方といいます。)が最近では多く、その場合は、医薬品の金額は少額となります。

(3) 固定資産
 診療科目及び診療の仕方によって設備投資の金額は異なります。内科、小児科より外科の方が当然多額の設備投資が必要とされています。また、医療法人が行うことができる附帯業務は限られているので、固定資産については、基本的には医療にかかる資産です。一般法人のように副業としてアパート経営を行うということは原則として禁止されています。

○ 独自の特徴のある項目
(1) 診療報酬収入
 診療報酬収入は診療を行ったときに計上されます。医療法人の収入の大半は保険診療であり、医療法の改正により、影響を受けるという特徴があります。医療法人固有の原因ではなく、制度の改正によって収入が変化します。
 また、診療報酬は点数製になっています。1点は10円で、例えば診療所の時間内の初診料は270点と定められています。270点かける10円で2700円の売上となります。(病院と診療所とでは異なります。)
 昨今、この点数は財源不足により医療全体で減少傾向ですが、医院が不足している産婦人科・小児科については点数を上げているように厚生労働省の医療政策により変わります。
 前年比と比べて診療報酬収入が減少していたとしても、国の背策による減少なのか医療法人自身の原因による減少なのか、検証することが必要です。
(2) その他の収入
 医療法人は、医療とその附帯業務以外の事業は原則的には禁止されているので、医療収入とその附帯業務以外の収入が多額に計上されません。そのため投資に係る収入(配当金収入や株式の売却益等)はありません。
(3) 売上原価
 医療法人内で調剤しているか、処方箋を書いて外部の薬局にて薬を調剤してもらうかによって、売上原価は大きく変わります。
 医療法人内で調剤している場合は薬品の仕入れが計上されますので、売上原価の金額は当然大きくなります。
(4) 法人税等
 医療法人の税金計算について、「社会保険診療報酬に係る概算経費の特例」、「法人税率」「特別法人の特別税率」の特典があり、消費税、事業税も社会保険診療収入については非課税となるため、一般法人より税負担が少なくなっています。
(5) 利益処分
 医療法第54条の規定により、剰余金の分配とみなされる行為は禁止されています。したがって、利益処分による配当、役員賞与の支給はありません。

<税理士からのPOINT!>
 課税所得=現預金とはなりません。キャッシュフローについて専門家に説明してもらいましょう。

出資持分の相続対策について、教えてください。

10年前、医療法人を設立しました。
 医療法人の理事長を勤める先輩医師から「とにかく理事長としての威光を築き、できるだけ影響力を長く持ち続けることが大事。出資持分も目の黒いうちは誰にも文句を言わせてはいけない。」とアドバイスを受けました。
 すっかりその気になり、顧問税理士にもその意気込みを話したところ、渋い顔をされ、「医大に通う息子さんが後継者になる可能性は考えていないのですか?今から対策を考えておかないと息子さんが相続税で苦しむことになるかもしれませんよ。」と言われました。

<失敗のポイント>
 短期的なガバナンスの問題にとらわれ中長期的な相続対策まで考えが及びませんでした。

<正しい対応>
 医療法人の所得が毎年出るような状況であれば、出資持分の評価も上がるので、引退する時に慌てて検討し始めるようなことでは十分な相続対策をとれないかもしれません。
 そこで、以下のような方策も考えられます。
(1) 医療法人設立後でも早めの移転を検討する。
(2) 役員退職金などの大型経費の支出があるときに出資持分の移転を行う。

<税法等の解説>
出資持分の相続対策
 遺産分割のトラブルや重い相続税の負担が、病医院の存続に影響することもあるので、事前に相続税のシミュレーションを行い、納税資金の確保なども含めた対策を講じておくことが必要です。

○ 相続事業承継対策
出資持分のある医療法人の理事長にとって、出資持分の後継者への承継は重要課題とい
えます。出資持分の評価は一般的に高額となるケースが多く、後継者含め相続人に対しての相続税の影響が大きくなるためです。
 したがって、後継者含め相続人の負担する相続税がどれくらいの金額になるのかを事前に把握し、相続税対策を長期的に検討することが重要です。

○ 理事長の相続における事前留意点
理事長個人の相続財産・債務の全体像を把握した上で、相続税納税資金の有無やその必
要額を確認し、後継者含め相続人へどのように財産を分割するのかを検討します。
 また、一例として以下のような事前確認が考えられます。

(1) 医業用不動産(土地・建物)の所有者は理事長か?
 相続財産は相続税評価額によって評価しますが、一定の要件を満たした土地である場合、「小規模宅地」についての相続税の課税価格の計算の特例」という制度により、最高80%の評価減を適用できます。

(2) 理事長からの医療法人への貸付金はあるか?
 理事長からの医療法人への貸付金(医療法人にとっては借入金)は理事長個人への相続税財産となります。

(3) 理事長の出資持分の評価はどれくらいあるか?
 出資持分は次期後継者が承継していくと考えられますので、理事長個人の相続財産のうち出資持分がどれくらいの評価額になるかを把握することは重要です。

(4) 理事長個人の財産のうち換金可能財産はどれくらいあるのか?
 相続税納税資金の確保、後継者以外の相続人に対する分割財産を確保できるのかを確認します。

○ 出資持分を事前に評価する重要性
医療法人の理事長の相続を考えた場合、医療法人の出資持分は理事長の相続税財産のう
ち最も重要な財産の一つです。
 その評価は相続時点での評価額となりますが、医療法人は配当金を出すことが法律上禁止されているため、長期間利益が出ている法人は法人内部に利益が留保し、出資持分の評価が設立当初に出資した金額を大きく上回ることが少なくありません。
 そして、出資持分の評価が高額になり、後継者に医業承継財産が集中した場合には、出資持分は換金性がないため、次期後継者となる相続人の納税資金が不足するケースも考えられます。
 したがって、次期後継者のスムーズな事業承継を行うためには、まずは現状における医療法人の出資持分の評価をして、次期後継者に与える相続税の負担がどれだけの金額になるのかをシミュレーションすることが重要となってきます。

○ 出資持分の相続税対策
出資持分が高額になっている場合、後継者には多額の納税が発生することが想定されま
す。したがって、前もって出資持分の評価の引き下げを図り、持分の一部を後継者に移転させることにより相続財産自体を理事長から切り離すことや、どのようにして納税資金を確保できるのかを検討することが重要となってきます。

(1) 出資持分の評価の引き下げの一例
 代表的な方法としては、理事長の勇退による退職金の支払が考えられます。
 退職金を支払った時等、多額の経費が発生する時には法人の純資産が減少するため持分の評価は下がります。そのタイミングで出資持分を後継者に移転するとよいでしょう。なお、移転の方法としては、譲渡と贈与の2つがあります。

(2) 納税資金の確保の一例
 すでに後継者が医療法事の理事長である場合には、不相当に高額な役員報酬とならない範囲で、ある程度将来の納税資金を意識した役員報酬を設定しましょう。
 その他、生命保険を活用して、理事長に相続が発生した時に、医療法人が遺族(後継者)に支給する死亡退職金の納税資金とする方法なども考えられます。

内部利益を備蓄すると出資持分の評価が高くなる。
設立当初の出資金:900万円
その他:100万円

出資金:1000万円
理事長:900万円
他:100万円
↓税引後利益:800万円
理事長:1620万円
他:180万円
↓税引後利益:800万円
理事長:2340万円
他:260万円

出資金評価額:2600万円

※ 医療法54条により配当は禁止されている。

<税理士からのPOINT!>
 相続対策では、相続人官でのトラブルが生じやすくなりますから、あらかじめ専門家に相談し、相続対策をしておくことがポイントです。

経過措置型医療法人と基金拠出型医療法人について

現在、経営している皮膚科クリニックがあるのですが、そこを法人化したいと考えてい
ます。
 私は、出資持分ありの医療法人を設立したいと考えており、書類等の作成を行い、都に提出を行いましたが、後日都から連絡があり、基金拠出型医療法人での設立を指導されてしまいました。

<失敗のポイント>
 出資持分ありの医療法人は、「経過措置型医療法人」と呼ばれています。これから新設する医療法人においては、経過措置型医療法人(出資持分あり)は設立することが不可能になってしまいます。

<正しい対応>
(1) 2007年4月以降に、新規で設立する場合には「拠出(基金)型医療法人」、「社会医療法人」、「特定医療法人」しか設立することは不可能となっております。したがって、現在の皮膚科クリニックを法人化したい場合においては、「経過措置型医療法人」では、設立することが不可能になっています。
(2) 医療法人を設立する際においては、現在、一般的には基金拠出型法人となっています。解散した場合においては、残余財産を国等に帰属させられることになりますが、十分メリット存在していることに留意すべきでしょう。新法下のメリット・デメリットをよく理解してみてはいかがでしょうか。

<税法等の解説>
基金拠出型法人と経過措置型法人の違い
 基金拠出型法人とは2007年4月1日の新医療法施行後において、通常設立される医療法人の形態をいい、持分の定めがないことが特徴となります。一方、経過措置型法人とは、2007年3月31日以前に設立された、持分の定めのある形態の医療法人をいうようです。

○ 社団医療法人
経過措置型法人
出資持分:あり 
定款の記載方法(社員資格喪失時)
【出資限度法人】
社員資格を喪失した者は、その出資額を限度として払戻しを請求することができる。
【持分あり医療法人】
社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。

基金拠出型法人
出資持分:なし 定款の記載方法(社員資格喪失時):定めなし

残余財産処分
基金拠出型法人
本社団が解散した場合の残余財産は、次の者から選定して帰属させるものとする。
(一) 国。
(二) 医療法第31条に定める公的医療機関の開設者。
(三) 都道府県医師会または都市区医師会(一般社団法人または一般財団法人に限る)。
(四) 地方自治体。
(五) 財団医療法人または出資持分なしの社団医療法人。

○ 新法での設立
新しい法律になって、医療法人の設立に不安を感じることもあるかもしれませんが、医療法人数は、年々増加しております。

医療法人総数
昭和61年:4168
平成元年:11244
平成7年:24275
平成14年:35795
平成18年:41720
平成20年:45078
平成22年:45989
平成24年:47825

うち一人医師医療法人
昭和61年:(179)
平成元年:(6620)
平成7年:(19008)
平成14年:(28967)
平成18年:(34602)
平成20年:(37533)
平成22年:(38231)
平成24年:(39947)

厚生労働省調査(平成24年3月31日時点)

<税理士からのPOINT!>
 医療法人を設立する場合には、自分の希望と設立したメリットが合致するかどうか専門家に相談することが望ましいでしょう。