登記完了後の諸手続きについて教えてください。

登記完了(医療法人設立)後の諸手続きは、おおむね次の通りです。
1.出資金の払込
    ↓
2.現物拠出等所有権移転登記
    ↓
3.医療法人設立登記完了届
    ↓
4.法人診療所開設許可申請書の提出
    ↓
5.個人診療所廃止届・法人診療所開設届の提出
    ↓
6.保険医療機関指定申請手続き
    ↓
7.法人診療所開設に伴う税務関係の諸届書の提出

 銀行口座の変更や公共料金の名義変更等も必要となります。
 また、医療法人化に伴って、従業員等の健康保険・厚生年金保険への加入義務も発生するため、それらへの加入手続きも必要です。

 登記完了後、医療法人として診察を開始するには、約1ヶ月かかります。

基金拠出型医療法人の設立時の税務上の留意点

1.交際費等の損益不算入制度
交際費等の損金不算入制度について、資本金又は出資金の額が1億円以下の法人に係る定額控除限度額は年600万円です。
基金拠出型医療法人は出資のない法人であるため、次の算式により計算した金額を資本金等に準ずる金額として損金算入限度額を計算することになります。
{期末総資産簿価-期末総負債簿価-(当期利益又は当期損失)}×60%=資本又は出資の金額に準ずる額 (貸借対照表に当期利益が計上されていればその金額を控除し、当期の欠損金額が計上されていればその金額を加算します。)
 なお、交際費等の損金不算入制度の適用期間は、現在のところ、平成26年3月31日までとされています。

2.寄付金の損金不算入制度
 基金拠出型医療法人の場合、寄付金(国等への寄付金を除く)の損金算入限度額は、事業年度の所得金額の1.25/100に相当する金額です。

3.消費税の納税義務
 個人開業医が基金拠出型法人を新設した場合、設立後2期間は消費税の納税義務が免除されます。基金拠出型法人については出資ではなく基金拠出となること等が、その理由です。
 また、設立後、基準期間(その事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら免税事業者となり、5,000万円以下なら簡易課税制度の適用対象となります。
 なお、平成25年1月1日以後に開始する事業年度から、その事業年度の前事業年度(7ヶ月以下のものを除く)開始の日から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円を超える場合には免税事業者ではなくなる等、免除要件が変わります。

4.均等割
 基金拠出型医療法人は出資のない法人であるため、地方税の均等割は各税率表の最低金額が適用されます。

5.基金の相続税評価
 基金拠出額は出資ではなく、債権です。債権の相続税評価は、一般的に元本の価格と利息の価格との合計額により評価されますが、基金の返還に係る債権には利息を付すことができないと定められています。したがって、基金拠出した額以上には評価されないということになります。

医療法人設立までのスケジュール

医療法人設立認可申請書の仮受付から設立認可までに約6ヶ月かかります。
医療法人設立までのスケジュールについては、都道府県によって若干異なりますが、おむね次のようになっています。
①事前相談・説明会
    ↓
②定款(案)・寄付行為(案)の作成
    ↓
③設立総会の開催
    ↓
④設立認可申請書の作成
    ↓
⑤設立認可申請書の提出(仮受付)
    ↓
⑥設立認可申請書の審査
    ↓
⑦設立認可申請書の本申請
    ↓
⑧医療審議会への諮問
    ↓
⑨医療審議会からの答申
    ↓
⑩設立認可書の交付
    ↓
⑪設立登記申請書の作成
    ↓
⑫登記申請
    ↓
⑬登記完了(医療法人設立)

・上記⑤について
医療法人設立認可申請の日程は、都道府県によって異なりますが、東京都では年2回、申請の受付が行われています。医療法人の設立については、設立認可申請を随時行うことができるわけではないことに、留意する必要があります。

・上記⑫について
 登記申請は、医療法人設立認可後、2週間以内に行います。

 設立後も諸手続きが必要で、登記完了後、医療法人として診察を開始するには、約1ヶ月かかります。

医療法人の設立認可申請書の提出時に必要な書類

医療法人は、都道府県知事の認可を受けなければ設立することができないとされています。

東京都に主たる事務所を置く予定の医療法人設立申請の場合、医療法人設立認可申請書に次のような資料を添付することとなります(事案によって添付資料が異なります)。東京都の場合、医療法人設立認可申請の仮受付時に提出する部数は1部、本申請時に提出する部数は2部(都保存用・認可書交付用各1部)です。
・定款(寄附行為)
・設立総会議事録
・設立当初において医療法人に所属すべき財産の財産目録
・設立財産目録の明細書
・基金に関する書類(基金拠出契約書等)
・預金残高証明書
・リース物件一覧表
・リース契約書(写し)
・リース引継承認願
・役員及び社員の名簿
・履歴書
・印鑑証明
・委任状
・役員就任承諾書
・管理者就任承諾書
・理事長医師免許証(写し)
・開設しようとする医療施設の概要
・開設しようとする医療施設の建物平面図
・不動産賃貸借契約書(写し)
・土地・建物登記事項証明書
・設立後2年間の事業計画書
・設立後2年間の予算書
・予算明細書
・職員給与費内訳書
・過去2年間の実績表
・2年分の確定申告書一式(写し)
・診療所の開設届(写し)           等
出典:東京都の『医療法人設立の手引』(平成23年5月版)を基に作成

相続に関する基金拠出型医療法人のメリット

基金拠出型医療法人に財産を拠出した場合には、一定の要件を満たせは拠出した財産に相当する額の返還を受けることができます。この返還を受けることができる基金は、相続税の課税対象になります。
しかし、拠出した以上に医療法人の財産価値が増加した場合でも、財産の評価は設立当初の金額とされるので、基金拠出型医療法人については、相続が円滑に進めやすいといえるでしょう。

 一方、出資持分のある社団医療法人(経過措置型医療法人)については、出資持分が相続税の対象財産になります。したがって、医療法人の出資持分の相続税評価額が高額になっている場合には、相続対策が必要になってきます。

基金拠出型医療法人の解散時の残余財産

基金拠出型医療法人について、解散時における残余財産は、
・国
・地方公共団体
・医療法第31条に定める公的医療機関の開設者
・都道府県医師会又は郡市区医師会
・財団医療法人又は社団医療法人であって持分の定めのないもの
のうち、いずれかに帰属されます。拠出者には、基金以上の金額は返還されません。

 社員総会の決議等により解散となった場合について、旧来の社団医療法人の定款には、「本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。」等の文言が入っていて、出資額に応じた財産の分配等が認められていました。

 しかし、残余財産の分配を認めてしまうと、利益が出た法人を意図的に解散させて利益を分配するということも起こり得ることから、第5次医療法改正では、医療法人の根本にある「非営利性」を基に、国等に残余財産を帰属させることにしたのです。

 そうしたことから、後継者が決まっていない医療法人では、高額な設備投資や資産の購入は計画性をもって検討することが必要になります。

 なお、改正医療法の施行日(平成19年4月1日)前に設立され若しくは設立認可申請をした医療法人については、残余財産の処分について経過措置が規定されていて、旧来の方式のままでいいことになっています。

基金拠出型医療法人の範囲

①基金制度を採用できる医療法人
 平成19年4月1日以降は、「基金」制度を採用することができるようになりました。基金拠出型医療法人とは、「基金」の制度を採用した医療法人のことをいいます。すなわち、出資持分のない医療法人で、基金の拠出を受けて運営される医療法人のことです。
基金制度を採用できるのは、社会医療法人・特定医療法人以外の持分の定めのない社団医療法人のみです。基金制度を採用しない場合は、「一般の出資持分のない社団法人(基金なし)」に区分されることになります。持分の定めのある社団医療法人や財団医療法人はもちろんのこと、社会医療法人や特定医療法人も基金制度を採用することができません。

②基金制度の趣旨
 基金とは、医療法人の財産として拠出されるものであり、法人運営のための原資となるものをいいます。具体的には、金銭のほか、土地・建物・診療設備等、医療法人を設立するために拠出したもののことです。このような基金制度は、「剰余金の分配を目的としない性格を維持しながら、活動の原資となる資金を調達し、財産的基礎の維持を図るための制度」といわれています。

③基金の返還義務
 基金制度を採用する場合には、基金の拠出者に関する規定や基金の返還の手続きを定款で定めなければならないとされています。基金拠出型医療法人は、拠出者に対して、定款で定めるところに従い、返還義務を負うことになります。金銭以外の財産を基金として拠出した場合には、拠出時のその財産の価格に相当する金銭での返還義務が生じることになります。
 なお、基金の返還に係る債権には、利息を付すことができないと定められています。

④代替基金
 基金の返還をする場合、当初の基金に相当する金額を「代替基金」として計上し、返還後も基金の総額が目減りしないようにしなければなりません。すなわち、当初の純資産(基金部部分のみ)が100あったとすると、基金返還時に代替基金として追加で100計上し、純資産が最低でも200なければ返還することはできません。
 なお、この代替基金については、基金が返還されても基金の総額が減少しないように設けられた制度なので、任意に取り崩すことはできないことになっています。

⑤基金の返還時期
基金の返還は、当初定めた返還時期経過後に開催される定時社員総会の決議によって行わなければなりません。
しかし、当初定めた年数を経過しても、純資産額についての要件を満たしていない場合には、返還することができません。すなわち、貸借対照表の純資産額が次に掲げる金額の合計額を超える場合、その会計年度の次の会計年度の決算の決定に関する定時社員総会の日の前日までの間に限り、その超過額を返還の総額の限度として返還をすることができるとされています。
・基金(代替基金を含む)の総額
・資産につき時価を基準として評価を行っている場合において、その時価の総額がその取得価額の総額を超えるときは、時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額
・資本剰余金の総額

新法の医療法人と経過措置型医療法人の違い

新法の医療法人と経過措置型医療法人では、解散時の残余財産の帰属先や退社時の出資持分払い戻し請求権について、大きな違いがあります。具体的には次の通りです。

(1)解散時の残余財産処分
  新法の医療法人では、解散時の残余財産処分について、定款又は寄付行為に、次のような規定が設けられています。
本社団(又は財団)が解散した場合の残余財産は、次の者から選定して帰属させるものとする。
・国
・地方公共団体
・医療法第31条に定める公的医療機関の開設者
・都道府県医師会又は郡市区医師会
・財団医療法人又は社団医療法人であって持分の定めのないもの

  一方、経過措置型医療法人は、改正医療法の施行日(平成19年4月1日)前に設立され若しくは設立認可申請をした医療法人であって、このような解散時の残余財産処分に関する規定が設けられていません。

 経過措置型医療法人の場合、その法人の定款には、解散時の残余財産処分に関して、
①持分の定めのある医療法人では、
 本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。
②出資額限度法人では、
  本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額を限度として分配するものとし、当該払込済資
額を控除してなお残余があるときは、社員総会の議決により、○○県知事(厚生労働大臣)の認可を得
て処分するものとする。
というような規定が設けられています。

財団医療法人で、その法人の寄付行為に、解散時の残余財産処分に関し、
 本財団が解散した場合の残余財産は、理事会及び評議員会の議決を経、かつ、○○県知事(厚生労働大臣)の認可を得て処分するものとする。
というような規定が設けられているのであれば、この法人も新法の医療法人とは呼べないでしょう。

(2)社員資格喪失時の出資持分払い戻し請求
  経過措置型法人の場合、その法人の定款には、社員資格喪失時の出資持分払い戻し請求に
関して、
①持分の定めのある医療法人では、
社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払い戻しを請求することができる。
②出資額限度法人では、
 社員資格を喪失した者は、その出資額を限度として払い戻しを請求することができる。
というような規定が設けられています。

 一方、新法の社団医療法人の場合、その法人の定款に、このような規定はなく、退社時の出資持分払い戻し請求はできません。

決算において作成する書類やこれらの書類の閲覧

医療法人(社会医療法人を除く)が決算において作成する書類は、事業報告書等です。これらの書類の閲覧については、「各事業所での閲覧」と「都道府県での閲覧」に大別されます。具体的には次の通りです。

①事業報告書等の作成
 医療法人の透明性の確保を図るという観点から、医療法改正により、医療法人は、毎会計年度終了後2ヶ月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、その他厚生労働省令で定める書類(以下「事業報告書等」という)を作成しなければならないとされました。
 事業報告書には、医療法人の概要(医療法人の名称・事業所の所在地等)と事業の概要(本来業務・附帯業務の概要等)が記載されます。
作成されたこれらの書類は、理事から監事に提出されます。監事は監査をし、監査報告書を作成することとなります。

②各事業所での閲覧
医療法人は、
・事業報告書等
・監事の監査報告書
・定款又は寄付行為
を各事務所に備えて置き、その社員若しくは評議員又は債権者から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないとされています。

 これらの書類の閲覧について、閲覧を行わないことができる「正当な理由」としては、個人情報の保護の場合や法人の業務の運営が不当に害される恐れがある場合、法人の執務時間外の閲覧請求等の場合が考えられます。

③都道府県知事への届出
 医療法人は、毎会計年度終了後3ヶ月以内に、
・事業報告書等
・監事の監査報告書
を都道府県知事に届け出なければならないとされています。

④都道府県での閲覧
 都道府県知事は、届け出されたこれらの書類と定款又は寄付行為について、請求があった場合には、これを閲覧に供しなければならないとされています。すなわち、債権者等のほか、一般の者も閲覧可能で、正当な理由があるか否かを問わず、閲覧に供しなければなりません。
 都道府県でのこれらの書類の閲覧は、過去3年間に届け出されたものが対象となります。

 決算において作成する書類やこれらの書類の閲覧については、以上の通りです。なお、医療法人の各事務所において書類の備え付けを怠った場合や都道府県知事に届出をしなかった場合等には、20万円以下の過料に処せられることになります。